深澤和弘展@桃居(2016年2月)

ブログの更新が久々になりました。
陽の光が春の近づきを思わせますが、既にうつわ界隈では草萌えのごとく企画展があちらこちらで開かれるようになりました。

西麻布の桃居では今年になって既に4回目の企画展が始まっています。今回は深澤和弘(ふかざわかずひろ)さんの個展です。

深澤さんはご自身の作品を発表されるのが初めて。
といっても若い新人という方ではなく、本職でデザインをされてきた60歳を過ぎた作り手です。5年ほど前に陶芸を始めて1年半前に窯を手に入れられました。

その経歴だけであれば教室に通って陶芸を始めた人たちと同じですが、深澤さんのストーリーには故・青木亮さんが関わっています。
2005年に急逝された陶芸家。その青木亮さんは天賦のカリスマ性をもち、今活躍されている陶芸家・木工作家をひきつけ、ひいてはこの15年のクラフトの世界全体に影響を与えました。

深澤さんの作品の紹介を急ぐために端折ると、深澤さんも青木さんの影響を受けた一人といえます。青木さんの作品を買い続け、その作品から焼き物の魅力を知られた方です。

さらに、出身地の佐賀県の土に限定して作品を作られているのも個性的です。佐賀の各地から採れる土を地図とともに展示して、場所を示しながら説明をするほどに地元の素材にこだわっています。

深澤さんは作品の説明をする時にうつわを「この子」と呼びます。下の画像の”子”はDMを飾ったお茶碗。

桃居で扱う作家ものに慣れているうつわの目に肥えた人たちでも、この縮れ(ちぢれ)はインパクトがあるでしょう。焼物好きであれば、山口県の萩焼にある鬼萩、あるいはルーシー・リーの溶岩釉を思い出すかもしれませんが、一般的にほとんど目にすることがない表情のうつわです。

上の画像のように、近くで見ても見どころが多く、なかなかの風格です。プロではないといっても、このような焼物を作れる深澤さんにはなかなかの陶芸センスを窺えます。

逆に単なる愛好家と違うのは、地元の土の、そのものらしさを引き出すのに注力する姿勢。この縮れにしても、「この土と釉薬がこうなりたいからなったんだろう、それならそれでいい」と捉えています。この作風はそういう放任さがなければ表れないに違いありません。

上の碗のように平坦で黒い表面の作品もあります。深澤さんは釉薬は藁灰釉と鉄釉の2種類ですが、マットな質感に仕上がる釉と光沢が出る釉、都合4種類の釉薬を使っているそうです。
それに佐賀の土とが合わさると、お互いの相性でいろいろな表情になります。下の碗も黒い色ですが、土には白い「武雄原土」を使っています。

「お餅のように」パリパリっと乾いて隙間ができる土なので、このような表情になるそうですが、深澤さん自身もまだ試行錯誤中。その中でこのような良い表情になったのが貴重です。

組み合わせが限られていると、それだけ成型の幅も限られます。深澤さんが手に入れた土はお皿の形にするには難しいらしく、今展でも碗形が並んでいます。

もう1つ深澤さんの特徴を挙げると、高台の底に貝殻の跡があること。これは窯で焼いている時に、台となる板とうつわが融けた釉薬でくっつかないよう器体を貝殻の上に置いたためです。

他の作家でもお茶碗を重ねる時などには使いますが、時間的にも価格的にもコストがかかるので、ふつうの食器(かつ釉薬を全面にかける場合)では耐火性の高い土を丸めたものを使います。
深澤さんはこれも佐賀県唐津にある虹の松原集めたそうです。そのため費用はかかりませんが、それでも時間はかかります。それでも貝を使うのは、自娯といえなくもないですが、やはり地元の素材で良いうつわを作りたいという思いの強さを表しています。


総体的に、初の個展、そして陶芸を始めて5年での成果と思えないほどの魅力ある作品が並んでいました。
その中でもう1点取り上げたいのが、下の片口。

どっしりとした形、飽きのこなさを助ける程良いゆがみ、ボツボツとした荒々しさのある灰色の部分の上に勢いを感じさせる白釉の流れ。焼物の魅力を多く備えています。

焼物の魅力といえば高台。プロの作家でも高台は難しいものらしいですが、深澤さんはなかなか好印象の高台を削られています。

話が青木亮さんに戻りますが、深澤さんは青木さんと学生の時からの友人であり、現代美術の活動も一緒にしていた間柄でした。青木さんの葬儀や回顧展でも中心的役割を担ったそうです。
ご自身は、青木さんの作品を別にすると他の作家の作品はあまり手元にない、作るのは土ものしか興味がないがプライベートで使うのは白磁の方が好きという深澤さん。
そんなお話を聞くと、深澤さんの焼物作りにはやはり青木さんの大きな影響があるのが分かります。

深澤さんの作品の魅力の源泉は、売れ行きは脇に置きコストを度外視してでも土からできた物としての魅力を求めているところにあると思います。良い意味で、プロならできない作り方、そしてプロなら作らないような質感のうつわたちです。

深澤さんの記念すべき初個展は桃居で3月1日(火)まで。うつわが好きな人にとっても新鮮な発見がきっとあると思います。

1件のコメント

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です